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■『戦旗』1621号(9月20日)4-5面

 
   市東さんの農地強制執行許すな
     第3滑走路―空港機能強化阻止

       10・9三里塚全国総決起集会へ


 

 三里塚芝山連合空港反対同盟と支援連絡会議は、昨年四月以降、市東さん宅離れを拠点として強制執行実力阻止態勢をとり、空港会社の強制執行攻撃を実力で阻止し続けてきている。この勝利的地平をもって、今春の芝山町での集会・デモ、今夏の第五回天神峰樫の木まつり、さらに9・4現地闘争を闘ってきた。今、反対同盟は10・9三里塚全国総決起集会への結集を呼びかけている。
 日帝―岸田政権は、改憲と戦争準備の攻撃を強め、大軍拡に踏み込もうとしている。安倍銃殺事件以降、自民党をはじめとするブルジョア政党と反共犯罪集団=統一教会の腐り切った関係が白日の下に暴き出され、労働者人民の怒りは日々高まっている。安倍の国葬を絶対に許してはならない。安倍国葬反対、改憲・大軍拡反対の労働者階級人民の意志を鮮明にして、今秋期の階級攻防に立ち上がろう。
 成田空港会社が今強行しようとしている農地強奪攻撃、第3滑走路建設を軸とした空港機能強化を徹底批判し、この攻撃を打ち破る闘いに立ち上がっていこう。


●第1章 強制執行実力阻止態勢の勝利的地平

 成田空港会社が市東さんに「農地明け渡し」を求めた裁判の結果としての「強制執行」は、昨年六月八日の最高裁の上告棄却によって確定した。かつ、二〇年一二月の東京高裁判決で「仮執行宣言」が付けられたために、昨年四月以来、法的には強制執行が可能な状態に置かれている。
 本当に許しがたいことだ。司法権力は、空港会社が一人の農民に対して強制執行を行なうことに「法的根拠」を与えたのだ。
 反対同盟と支援連は、市東さん宅離れ=天神峰決戦本部に深夜―早朝も常駐する態勢をとり、空港会社の抜き打ち強制執行を実力で阻止する取り組みを一貫して続けている。空港公団―空港会社は歴史的にだまし討ちで農地強奪を繰り返してきた。反対同盟を軸にした強制執行実力阻止態勢は、すでに一年半近くにわたって継続されている。この力によって市東さんの農地強奪を阻止し続けているのである。

市東さんの農地を守り抜く意義

 強制執行実力阻止態勢は、反対同盟と支援連の一日一日の闘いによって勝利的に進められてきたものだが、この闘いの基底には、市東さんが市東さんの農地で農業を続けること、そのものの正義がある。
 成田空港会社は、市東さんの耕作地の所有権を、旧地主から秘密裡に買収し、かつ、農地法の例外規定を悪用して農地を空港用地に転用した上で、市東さんの耕作する権利を奪い取って、市東さんに「明け渡し」を要求したのだ(農地法裁判)。
 すでに幾度も確認してきたことではあるが、空港会社の農地取得の手法は絶対に許すことができない。
 旧成田空港公団(=現空港会社)は一九八八年、市東孝雄さんの父東市さんが耕作し続けていた農地を、最も重要な利害関係人である東市さん本人には秘匿して、地主から所有権を買収した。土地所有者が変わり、農地の賃貸関係も変えなくてはならないにもかかわらず、空港公団は一五年間登記を行なわなかった。東市さん、孝雄さんをだまし続けていたのだ。
 二〇〇三年になって移転登記を行い、成田空港会社となった後の〇六年になって、市東孝雄さんに対して小作契約解除の手続きを開始した。
 今もそうであるように、市東さんが耕作している土地は農地であって、空港用地ではない。農地法に例外規定があるとは言っても、農地の転用は簡単に認められるものではない。空港会社は、成田市農業委員会、千葉県農業会議、最終的には千葉県知事に対して、農地から空港用地への転用の許可を求めた。
 市東市太郎さんが一九一二年に開拓農民として農地を拓き、東市さん、孝雄さんと三代一〇〇年以上にわたって耕作してきた農地を、どうして空港用地に転用できるのか! 農業委員会、県農業会議、そして堂本知事(当時)も、市東孝雄さんが納得のいく説明をしていない。空港会社も行政機関も行政の長も、単なる法的手続きとしてしか捉えていなかったのだ。しかし、生活の糧として農地を耕作する農民から見れば、生活と生命の根拠を奪い取るものだ。理不尽で横暴な処分だ。
 空港会社は、成田市と千葉県の決定をもって、農地を空港用地に転用する権限を握り、市東さんに農地貸借の解約を申し入れた。当然にも、市東さんはこれを拒否した。空港会社は「明け渡し」の提訴を行なった。
 この農地法裁判は、「明け渡し」を命ずる一三年の千葉地裁・多見谷判決が、高裁、最高裁にも引き継がれ、一六年に確定した。
 その上で、農地法裁判の確定判決は市東さんに対して「明け渡し」を命ずるもので、そのまま空港会社の強制執行を認めたものではない。市東孝雄さんと反対同盟は、強制執行に踏み込もうとする空港会社に対して請求異議裁判を起こして闘ってきた。だまし討ち的に所有権を移転した上で、市東さんの生活の全てである農地を奪い取ろうとする空港会社に対して、市東さんが「明け渡し」を拒否するのは全く正当である。農民である市東さんは今まで通り耕作を続けようとしているだけだ。強制執行は、この市東さんの生存権を破壊する攻撃であり、こんな暴力が認められて良いわけがない。
 しかし、一九年一二月の千葉地裁・高瀬判決は強制執行を認める判決を出し、二〇年一二月の東京高裁・菅野判決は強制執行を認め、かつ仮執行宣言を付けた判決を出した。さらに、最高裁は二一年六月上告を棄却し、強制執行判決を確定させた。高裁・菅野判決によって昨年四月一日以降、法的には、空港会社は強制執行を行なえる状況になった。
 加えて、空港会社は、市東さんの農地に存在し反対同盟が所有する大看板・やぐらなど四つの工作物に対して、市東さんの農地の明け渡しと一体に撤去することを求めて裁判を起こしている(新やぐら裁判)。控訴審が争われてきたが、東京高裁・渡部裁判長は九月二日、仮執行宣言付きの控訴棄却判決を出した。空港会社は、この判決をも「根拠」にして市東さんの農地の強制執行に着手しようとするだろう。
 まさに、空港会社、行政機関、司法権力が結託し、人民の生活を暴力的に破壊する権限を握り、一人の農民、市東孝雄さんに襲いかかろうとしている。市東孝雄さんは、農民として、かつ反対同盟として、天神峰の地で農業を続ける決意を表明している。
 天神峰決戦本部を軸にして闘い抜いている強制執行実力阻止態勢は、この市東さんの当たり前の権利を守り抜くものである。その上で、この闘いは、市東さん一人だけの闘いではない。周辺市町の廃村化と騒音地獄拡大そのものである空港機能強化策=空港拡張工事に着手しようという空港会社の攻撃と対決する、周辺住民の展望を切り拓くものである。反対同盟とともに農地強奪阻止を闘おう。

芝山文化センター使用不許可を粉砕

 反対同盟は市東さんの農地強奪阻止攻防を闘い抜くと同時に、第3滑走路をはじめとする空港機能強化策に対して、周辺地域への一斉行動など周辺住民への働きかけを進めてきた。
 この反対同盟の空港絶対反対の闘いを恐れているのが、空港機能強化策を新たな空港利権と捉えて、これに群がった者たちである。空港会社が第3滑走路建設をはじめとする空港機能強化策を決定して推進しえているのは、空港会社側の方針であると同時に、林幹雄など自民党の国会議員による第3滑走路建設推進、そして、千葉県、周辺市町の空港建設利権への関与があるからだ。
 芝山前町長・相川勝重は、空港会社と結託し、芝山町内での空港反対運動を弾圧してきた。
 昨年三月、反対同盟は空港機能強化策に反対する集会・デモを開催しようとした。しかし、前芝山町長・相川勝重の判断で、芝山町として芝山文化センターの貸し出しを許可しなかった。三里塚芝山連合空港反対同盟だけを公的会場の貸し出しから排除する決定だった。
 反対同盟は集会開催を断念はしなかった。昨年三月二八日、成田市天神峰で集会を開催し、参加者全員が芝山町に移動した上で、芝山デモを貫徹した。しかし、この会場貸し出し拒否をもってする、基本的人権=集会・結社の自由、表現の自由を禁圧する政治弾圧を許してはならない。反対同盟は、貸し出し拒否を撤回させるべく芝山町に審査請求を行なった。
 審理委員会が数カ月にわたって審査し、昨年一二月に「貸し出し拒否を撤回」する判断を出した。行政機関の違憲・違法の判断に対して、当然の結論が出されたものではあるが、反対同盟が闘って切り拓いた勝利である。
 成田空港の機能強化、第3滑走路建設をめぐる用地買収、建設工事の利権の奪い合いが始まっている中で、この利権のただ中にいる前町長・相川らは、芝山町内で反対同盟と結合した空港反対運動が改めて高揚することを何よりも恐れている。真剣に住民の生活と生命を考え行動する人々を排除し弾圧する攻撃を絶対に許してはならない。
 本年三月二七日、反対同盟は、奪還した権利を行使し、芝山文化センターで空港建設反対集会を堂々と開催し、芝山町中心部でのデモを貫徹した。集会においては、芝山町で騒音被害に苦しんできた住民が参加し、空港機能強化策によって飛行制限時間がさらに短縮されようとしていることを強く批判した。空港機能強化策に反対する闘いに立ち上がっていることが表明された。
 空港会社の新たな攻撃の中で、三里塚闘争は周辺住民運動との結合、連帯の展望を刻印した。

●第2章 第3滑走路建設攻撃を打ち破れ

「空港機能強化」の熾烈な攻撃


 成田空港会社は昨年一二月、「成田空港会社の更なる機能強化/滑走路整備計画の概要について」なるパンフレットを発行し、周辺市町で配布している(空港会社ホームページでも公開)。
 「成田空港の年間発着容量を現状の三〇万回から五〇万回まで拡大することができるC滑走路の新設・B滑走路の延伸等といった『成田空港の機能強化』」が二〇年一月三一日に、国土交通相の許可を得たことによって、整備計画全体を発表したものだ。
 現在の二五〇〇メートルのB滑走路を北側に一〇〇〇メートル再延伸し三五〇〇メートルにする。その南方向に同じ規模の第3滑走路=三五〇〇メートルのC滑走路を新設する。C滑走路のための誘導路を新設する。B滑走路建設のための東関東自動車道切り回し工事に二二年秋に着手し、C滑走路建設のための河川排水整備工事に二三年に着手。工事全体の完成予定は二九年三月三一日と発表している。
 この工事によって、空港敷地は、現在の一一九八ヘクタールから二二九七ヘクタールに拡張する。現行の成田空港の二倍の規模の空港にするということだ。これは空港会社の立場からの計画説明である。この計画は、そこに暮らす住民からみるとどういうことになるのか。
 現在の成田空港は成田市に位置し、南北に大きく伸びた騒音地域が存在している。新たに拡張する計画では、第3滑走路建設計画の大半は芝山町の北部地域に描かれている。そして、B滑走路は、東関東自動車道を越えて大きく北に伸びる。芝山町の滑走路予定地とそのアプローチエリアの住民には移転を迫り、地域の廃村化を大きく進めることになる。滑走路が大きく南北に建設されることになり、騒音地域は南北に大きく拡大する。芝山町全体、その南に隣接する横芝光町、一方では、成田市北部から利根川を越えた茨城県側にまで拡大する。
 空港会社は、発着回数の拡大が絶対に必要だということを「根拠」に、この工事に着手しようとしている。しかし、空港拡張が困難であることは、五六年前の空港用地選定の段階からわかっていたことだ。そもそも、それこそが内陸空港の限界であったはずだ。現成田空港の用地確保そのものが困難であったのに政治的かつ暴力的に強行したからこそ、計画どおりに建設することができなかったのだ。事業認定切れになって以降もだまし討ち的な用地取得をなそうとして、現在に至っているのではないか。
 内陸空港の限界が歴史的に明らかになっているにもかかわらず、空港会社の経営規模拡大方針のためにのみ、機能強化の工事を強行することがあってはならない。これ以上の廃村化と騒音地獄の拡大を絶対に許してはならない。
 反対同盟は九月四日、「今秋着工」予定のB滑走路再延伸工事計画地域での工事反対闘争を取り組んだ。第3滑走路建設を軸とした空港機能強化工事の一切を許してはならない。九月の工事予定地デモに続き、現地攻防を闘い、周辺住民とともに成田空港拡張工事を阻止しよう。

コロナ禍において続く航空不況

 成田空港会社は、その年間発着回数を三〇万回から五〇万回に拡大することが必要になると主張して、第3滑走路建設をはじめとする空港機能強化策を押し通している。空港会社の論法は、航空需要が必ず拡大基調で進むというものであり、それを首都圏の羽田、成田に割り当てれば、成田は年間五〇万回発着が必須になるというものである。
 「成田空港の現状と将来」なる空港会社の文書には、「首都圏空港の将来需要予測」として二〇一九年までの発着回数増大のグラフの単純な延長線が描かれており、この想定のグラフによって二一~二八年には三〇万回発着に達し、三二~四八年に五〇万回に達するとしている。日本経済の現状についての分析もない単純なグラフの延長予測だけで、「五〇万回発着」方針が一人歩きしてきたのである。
 これが、成田空港会社社長・田村明比古がコロナ禍の航空需要消滅状況の中でも固執してきた空港機能強化策の「根拠」である。
そもそもコロナ感染拡大前の一九年でさえ年間発着の実数は二六万四一一五回であり、これが過去最高なのだ。これとて、空港会社が格安航空会社(LCC)専用のターミナルまで建設して、LCCを誘致し、そのために周辺市町の首長をねじ伏せて深夜・早朝の発着時間延長までしてきた上での、最大値なのだ。
 周知の通り、二〇年以降はコロナ禍によって航空需要は激減した。とくに出入国が禁止された状況では、国際線の航空需要が消滅した。航空貨物の需要があるとはいっても、旅客が存在しなければ、旅客機は飛ばない。二本の滑走路の成田空港が、一本で運用するまでに落ち込んだ。
 第七波のコロナ感染拡大が続く現在、岸田政権はコロナ対策を積極的に取り組もうとしていない。岸田は、労働者人民の生命より、資本の再生産のために経済活動を停滞させないことを重視している。さらに言えば、コロナ対策への財政支出を制限している。防衛費を倍増することを目論む一方で、労働者人民の生命と生活を守るための財政支出を惜しんでいるのだ。
 結果として、今夏の感染拡大の中で、岸田政権は、国内の移動制限を全く行なわなかった。この移動制限のない状況をもっとも歓迎したのは、旅行会社、航空会社、そして空港会社だ。人民がコロナに感染しようがどうなろうが、旅客数の増大だけを評価している。成田空港会社は八月二五日に、七月の空港運用状況を発表した。国内線旅客便数は前年同月比165%、旅客数は前年同月比186%を記録したとし、さらに、国際線日本人旅客数は前年同月比632%だとしている。
 確かに、企業の経営状況は「前年同月比」で示すということではあるが、しかし、コロナ禍で移動制限のあった一昨年、昨年と比較したところで、経営が向上したことにも、空港使用が増大していることにもならない。コロナ感染前の一九年との比較では、国内線旅客数は86%であり、国際線日本人旅客数は21%である。
 岸田政権の移動制限解除状況にあった本年七月でさえ、「五〇万回発着」を目指すどころか、「三〇万回発着」に達する見通しさえ消えてしまっている。

時代錯誤の航空需要拡大予測

 コロナ禍ということだけが問題なのではない。日本経済が停滞する中で、一体どうして航空需要だけが右肩上がりの拡大基調を続ける、というのだろうか。今や、アベノミクスが失敗であったことは誰の目にも明らかだ。安倍政権の強引な人事で日銀総裁に就任した黒田は「2%インフレ」を目標に、ゼロ金利政策に上乗せする量的緩和策を続けてきた。本年、ウクライナ侵略戦争を大きな要因にして物価は上昇に転じているにもかかわらず、日銀はこの金融緩和を転換することができない。
 アベノミクスでなされたことは、異次元の金融緩和と、財政赤字を深刻化させる放漫財政であった。その一方で、労働法制の改悪をくり返して、労働者の非正規への転換を強行してきた。結果として、ブルジョアジーと富裕層は優遇され、彼らの資産は増大した。一方で、日本の労働者の賃金は上がらず、OECD(経済協力開発機構)諸国の中でも特異な形で格差の拡大が進んでいる。
 現在の日本経済はインフレ状況に直面しながら、賃金は上がらず、労働者人民の購買力は低下して民生が悪化する事態になっている。アベノミクスの大失敗がまざまざと表れてきた現在の日本経済を直視することを、成田空港会社は怠っている。この日本の経済状況で、航空需要だけが右肩あがりに増大していくわけがない。
 さらに、地球温暖化による気候変動が劇的な気象災害をもたらしている状況の中で、温暖化対策=温室効果ガスを制限しなくてはならないことは、今や国際的な共通の了解である。
 航空機による移動は他の交通手段と比較して、その移動距離に比して温室効果ガスをより大量に放出する。政策的に航空需要を抑制することは、環境政策としてなすべき緊急の施策である。航空需要の増大を煽り立てるのではなく、逆に、これを抑制するための政策が提示されて当然である。
 成田空港会社は、会社経営として需要拡大を追求するのだという主張が許されてはならない。民営化されたとは言っても、政府がその株式のすべてをもっている「民営会社」である。空港の拡張工事に対しては国が資本増強し、空港経営においては地球環境など関係なく企業として利潤追求する、ということは成立しない。今でも税金が投入された空港であるからこそ、人民の利害に反するような経営は許されない。住民を苦しめる拡張工事など決して行なってはならない。
 岸田政権が地球温暖化対策に取り組むというのであれば、まずもって航空需要を政治的に抑え込み、成田空港を縮小し、廃港にするための政策に転換しなくてはならない。

騒音被害の拡大を許すな

 成田空港会社は、機能強化策の一環として、深夜・早朝の飛行制限時間の短縮をなしてきた。これまで二三時から朝六時までは飛行制限時間であったものを二四時(〇時)から六時に短縮した。しかも、東京オリンピック・パラリンピックをも口実にして、前倒ししてまで強行してきた。
 しかし、本当に、深夜・早朝便の発着が必要なのか。
 人命にかかわるような緊急の措置として、深夜・早朝の発着がなされるようになったのでは決してない。あくまでも、空港会社の経営上の問題だ。二〇一〇年に羽田空港が再国際化されて以降、都心からのアクセス、また、国内線への乗り継ぎなどの利便性で成田空港に優っているがゆえに、大手航空会社は、羽田の国際線を積極的に選択している。
 この流れを放置すれば、成田から羽田に国際線が移っていく状況の中で、成田空港会社は、航空会社としては新興勢力のLCCを積極的に誘致してきた。しかし、LCCは、少ない機材で回転数を上げて稼がなくてはならない。つまり、一日の往復回数を増やすことが、格安航空会社経営の条件なのだ。そのためには深夜・早朝でも発着できることが重要な条件になる。LCCのこの要求に応えることが、成田空港の経営条件ともなっているのだ。
 成田空港会社とLCCの経営上の必要のために、むりやり飛行時間制限を破り、人間の睡眠時間の限界を無視した飛行時間延長を強行してきたのだ。さらには、飛行制限時間をなくし、二四時間化をも狙っている。空港機能強化策とは、空港規模を空間的に拡張すると同時に、時間的にも空港使用の制限を突破して拡張しようというものだ。睡眠破壊、健康破壊の殺人的な飛行時間制限短縮を絶対に許してはならない。

反対同盟が新たな裁判闘争

 反対同盟は八月三日、第3滑走路建設をはじめとする機能強化策が生活や権利を侵害し違憲・違法であるとして、国の許可の無効確認と空港会社の工事差し止めを求める訴訟を起こした。
 反対同盟は、二〇一〇年に起こした第3誘導路裁判において、第3誘導路建設の取り消し、B滑走路の使用禁止、飛行差し止めを求めて争ってきている。千葉地裁に対して、二つの裁判を併合して審理することを要求している。
 成田空港は、機能強化策のとおりに拡張すれば、六六年の当初計画の二倍の規模の空港になるということだ。徹底的な廃村化攻撃であり、騒音、落下物、事故の危険など、空港が存在するがゆえの被害は、さらに集中することになる。周辺住民から空港機能強化策反対の声が表明され、新たな住民団体が形成されはじめている。反対同盟の現地での闘い、法廷での闘いは、空港周辺住民の利害に立ったものである。空港会社の理不尽な攻撃を打ち砕こう。


●第3章 三里塚に結集し改憲―大軍拡をうち破れ

ウクライナ侵略戦争と、帝国主義が進める分断・対立

 ロシアによるウクライナ侵略戦争は半年が経過しても停戦の見通しは立たず、激しい戦闘が続いている。米帝をはじめとするNATO諸国の武器供与など軍事支援は拡大している。殺戮の継続の裏面で、各国軍需産業が活況を呈していることこそが、この戦争の残虐性である。
 米帝―バイデン政権は、政権発足から一貫して主張してきた「民主主義と専制主義の対決」の構図を一層強め、中国、ロシアに対する軍事的対決姿勢を強めている。八月の米下院議長ペロシをはじめ米国会議員たちは、台湾訪問という行動をもって中国―習近平政権を挑発してきた。
 日帝―岸田政権は、日米同盟強化、日米豪印クアッド強化と同時に、韓国―尹錫悦(ユンソンニョル)政権とともに日米韓の軍事関係強化を進めている。本年の環太平洋合同軍事演習リムパックに際して、自衛隊は「存立危機事態」を想定した実動訓練を初めて実施した。また、日米韓の合同軍事訓練「パシフィック・ドラゴン」を強行した。
 岸田政権と自民党は、ウクライナ侵略戦争が現実の戦争として起こったことを最大限に利用して、東アジアにおける戦争の現実性を主張している。戦争を起こさないような外交を熟考するのではなく、戦争が起こる可能性のみを煽り立て、中国、朝鮮民主主義人民共和国への敵視を強めている。銃殺された安倍晋三は「台湾有事」を煽り、かつ、これを日本の「存立危機事態」だと主張して、中国との戦争準備に駆り立てていこうとしていた。さらに、核兵器保有国との戦争を煽るがゆえに、日本が米国との「核兵器共有」に踏み込むべきだとまで主張していた。「安倍国葬」を強行しようとする岸田は、この安倍政治を引き継ごうとしている。安倍の「遺志」として改憲―戦争準備に踏み込もうとしている。
 この改憲と戦争準備の動きは、ウクライナ戦争前から進められてきたことだ。中国との戦争を想定して昨年秋に九州などを中心に実施された陸自大演習は、現実の戦争を想定した兵站輸送を行なうものであった。兵器を使った派手な戦闘訓練ではなく、長期にわたる戦役を準備する演習に着手し始めたのだ。岸田政権は「台湾有事」を煽りながら、この戦場を想定した自衛隊の配備、琉球弧の基地強化を進めている。琉球弧の戦場化であり、このような戦争準備、戦争挑発を許してはならない。
 改憲―戦争に向けた岸田政権の一大反動攻勢に対して、国策としての成田空港建設、農地強奪、第3滑走路建設攻撃と対決する三里塚勢力こそが、断固とした実力闘争に立ち上がっていこう。


沖縄の戦場化阻止、「安倍国葬」反対を闘おう

 今こそ、日本の左派、反戦勢力の闘いが問われている。
 岸田政権は、安倍銃撃事件の直後に、独断で「国葬」を決定し公言した。安倍銃殺事件の真相が統一教会と自民党の癒着問題であることが鮮明になり、労働者人民の批判が政府に集中している。追い詰められた岸田は内閣改造に踏み切ったが、何も代わり映えのしない「改造」であった。新内閣の閣僚の多くが統一教会と関係し、岸田自身の後援会が統一教会の「日韓トンネル事業」に全面的に関与していることまで暴露されている。岸信介、安倍晋三どころではなく、自民党をはじめブルジョア政党のほとんどが反共犯罪集団=統一教会との関係をもって政治活動をしてきたことが明らかになっている。自民党そのものが統一教会とつながっている以上、岸田が内閣改造を行なったところで、この腐敗構造を断ち切ることはできない。
 国葬に反対し、統一教会を弾劾する世論は日増しに強まっている。労働者人民の意思は、岸田政権打倒だ。
 岸田政権の戦争準備は、対中国を企図して行なわれており、具体的には琉球弧への自衛隊配備増強として進んでいる。辺野古新基地建設もこの戦争準備の中に位置づけられている。「琉球弧の戦場化」を阻止する闘いこそが、岸田政権の改憲―戦争準備の攻撃との実践的な対決になる。
 反対同盟は、沖縄、福島との結合を鮮明にして闘い抜いてきた。日帝国家権力の反動攻勢の矛盾が集中するところで、これに抗して闘いに立ち上がる人民が結合し、反戦闘争、反原発闘争を大きく前進させていくことが、今ほど問われているときはない。
 国葬反対に立ち上がり、新基地建設を粉砕し、反原発闘争を闘い、この力をもって三里塚に結集しよう! 今秋期の攻防の重要環として10・9三里塚全国総決起集会に結集しよう!




 


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